朗読・浦島太郎


 まもなく、かめはまた出てきて、
「さあ、こちらへ」
と、浦島を御殿ごてんのなかへ案内あんないしました。たいや、ひらめやかれいや、いろいろのおさかなが、ものめずらしそうな目で見ているなかをとおって、はいって行きますと、乙姫おとひめさまがおおぜいの腰元こしもとをつれて、お迎むかえに出てきました。やがて乙姫おとひめさまについて、浦島はずんずん奥おくへとおって行きました。めのうの天井てんじょうにさんごの柱、廊下ろうかにはるりがしきつめてありました。こわごわその上をあるいて行きますと、どこからともなくいいにおいがして、たのしい楽がくの音ねがきこえてきました。
 やがて、水晶すいしょうの壁かべに、いろいろの宝石ほうせきをちりばめた大広間おおひろまにとおりますと、
「浦島さん、ようこそおいでくださいました。先日はかめのいのちをお助たすけくださいまして、まことにありがとうございます。なんにもおもてなしはございませんが、どうぞゆっくりおあそびくださいまし」
と、乙姫さまはいって、ていねいにおじぎしました。やがて、たいをかしらに、かつおだの、ふぐだの、えびだの、たこだの、大小いろいろのおさかなが、めずらしいごちそうを山とはこんできて、にぎやかなお酒盛さかもりがはじまりました。きれいな腰元こしもとたちは、歌をうたったり踊おどりをおどったりしました。浦島はただもう夢ゆめのなかで夢を見ているようでした。

原稿は青空文庫さまより、
BGMはDOVA-SYNDROMEMさまよりお借りしました

タイトルとURLをコピーしました